白杖の工夫紹介
❧ご紹介している工夫・使い方は全て視力に頼らないものです。
1. 製品情報
まずは白杖そのもの、つまり製品の情報について少しだけご説明します。普段から白杖をご利用の方にとっては当たり前の内容かもしれませんので、その場合は次項へ移動してください。
僕が使っている白杖は、認知度の非常に高いアドバンテージ製のものです。僕の住んでいる地域では補装具の支給対照ではないので少し高価なのですが、自費で購入しています。というのも、アドバンテージの杖はガラスファイバーを利用しているためとても丈夫で、支給される金属製のものとは比べ物にならないほど質が良いんです。詳しい説明については以下の表をご参照ください。
仕様項目 | 詳細 |
---|---|
形状 | 折り畳み式(5段折り) |
長さ(※1) | 137cm |
チップ・石突(※2) | パームチップ |
商品リンク | 「アドバンテージ(折りたたみ)パームチップ式」 |
- ※注
- ※1. 白杖の長さは概ね腋(わき)から床・地面までが最適であるとされています。身長182、3cmの僕には、137cmの白杖が適していました。日本点字図書館の「わくわく用具ショップ」では杖長を101cm-157cmまで、5cm刻みで選択することができます。
- ※2. 詳しくは次項でご説明しますが、チップ(石突)と呼ばれる白杖の先端部分は、複数の種類の内から選べるようになっています。後から単品で購入・付け替えも可能です。
チップ(石突)とは白状の先端、つまり地面を探るためのパーツで、購入時に「スタンダードチップ」、「パームチップ」、「ローラーチップ」、「ティアドロップ」の中から好きなものを選べるようになっています。
僕が使っているのはこの中の「パームチップ」というもので、先端がキノコ型に広く、滑りが良くできています。失明当時はスタンダードチップを利用していたのですが、あまりに地面の凹凸や点字ブロックに引っかかって歩きにくかったので、途中からパームチップに変更したんです。滑りやすさはローラーチップが最も優れているようなのですが、そちらは重くてタッチテクニック(※3)に向いていないと言われ、より汎用性の高いパームチップを選んだという経緯があります。
ただし、チップはそれぞれに特徴があり、どれが使いやすく感じるかは人それぞれだと思います。機会があれば色々なチップを試し、ご自分に合うものを見つけてみてください。
- ※注
- ※3. タッチテクニック: 「タッチテクニックは離れた2点をタッチしながら歩く方法です。カチッカチッと音を立てて歩くため、音で周囲に自分の存在を知らせることができます。」(白杖の用語集 - 株式会社KOSUGE から引用)
2. キーチェーン・ストラップなど
白杖を見つけやすくしたい、目立たせたいと思った時、最初に思い当たるのがキーチェーンやストラップなどの装飾品でしょう。この項目では、僕が白杖に付けているキーチェーンについて、その効果とともにご説明します。
(1) 鈴白杖に取り付けるキーチェーン・ストラップとして外せないのが、鈴です。偶に「うざい」、「煩い」などと言われることもありますが、鈴は自らの存在を周囲の人に知らせるための、最適の方法だと思います。
ネットで購入したものではないのでリンクを貼ることはできませんが、僕が現在付けているのは成田空港で偶々入手した、やかん型の鈴ストラップです。形が可愛いのは勿論、音の大きさ・質が程よく、白杖に付けるのには最適だと思い、一目惚れして購入したものです。特に一緒に付いていた木彫りの猫が可愛いのですが、それについては次項でご説明します。
実はこのストラップ、一度切れて落ちてしまったことがあるんです。運よくなくさず持ち帰られたので今はキーチェーンに作り直して再利用していますが、切れてから2週間ほどは鈴なしで単独歩行をしていました。この時、全く杖に気付かず衝突してくる人の数が急増し、鈴の音の重要性を初めて実感しました。
鈴のストラップと聞くと「子供っぽい」、「煩い」というイメージを持つ方も多いかもしれませんが、これは周囲に自らの存在を知らせ、警告するためには欠かせないものです。特に全盲や強度の弱視など、白杖に頼って歩行されている方には絶対にお勧めです。
(2) その他装飾用続いては通常のストラップやキーチェーン、つまり装飾品についてです。
前項でも少し触れましたが、僕は鈴のストラップに一緒に付いていた、木彫りの猫を使っています。招き猫が両前足で口を押えているような形で、やかん型の鈴とよく合う可愛いデザインです。
このようなストラップは単純に装飾用、つまり杖を目立たせ差別化するためのものなので、どのようなものを付けるかは好みによると思います。ただ、僕の経験上、汚れにくく、鈴とぶつかることで音を響かせてくれる、木彫りやプラスチック製のキーチェーンが使いやすいと感じています。僕も以前はぬいぐるみのストラップを付けていたことがあるのですが、すぐに汚れてしまい、鈴の音を邪魔してしまうため、途中から今のものに変更したんです。
3. 持ち手
続いては僕自身、最近になって初めて気にし始めた、白杖の持ち手、グリップ部分の工夫についてご説明します。
白杖のグリップ部分は頑丈なゴムで覆われていて、握りやすい構造になっています。しかし、このゴムの部分は汚れが付着しやすく、また色の薄い洋服に黒い色が移ってしまいがちです。この解決策として、まず思いついたのが、傘の柄に被せるための、ビニールや布製のカバーです。ですが、白杖に合った形状・大きさのカバーはなかなか手に入らず、またビニールや布を被せてしまうとグリップ、つまり握りやすさが損なわれてしまいます。ということで次に思い当たったのが、100円ショップに売っている、ビニールテープを巻き付けて覆うことでした。
ビニールテープを貼り付けるのにも、いくつか不安な点がありました。まずは傘カバーと同様に、つるつるのビニールがグリップ性を損なってしまう恐れがありました。また、安価なビニールテープでは雨に濡れて剥がれてしまうのではないかと気になっていたのです。とりあえず「安いから」と試しに購入して巻き付けてみると、これがなんと大成功でした。
不安点その1ですが、上の写真のように、斜めに、段々に巻き付けていったことで、まるでテニスラケットのグリップテープのようになり、程よく滑り止めの代わりになってくれました。使ってみると、テープの際が手に程よく引っかかり、一度も杖を取り落とすことなく歩行することができました。そして不安点その2ですが、これも防水性のテープを購入した訳でもないのに、なぜか水を弾いてくれました。多分、きっちりとテープ同士が重なり合うように貼ったことで、水が粘着部分に侵入できず、結果的に防水性を示したのだと思います。
何はともあれ、ビニールテープ作戦は大成功に終わりました。僕がグリップにテープを巻き付けてからそろそろ2週間になりますが、どこも剥がれたり、汚れたりせずに、綺麗に保てています。白杖の黒いグリップ部分に不満を感じられている方は、ぜひ一度お試しください。僕は上図のように青いテープを使うことで、同時に目立つようにもしてみましたが、100円ショップでは様々な色・デザインのビニールテープが販売されています。皆さんもお気に入りの色を見つけて、巻き付けてみてください★
4. 白杖スタンド
次のアイテムは白杖を突く時ではなく、収納する時のためのものです。最近では多くの病院・役所などで配置されていますが、白杖を棚などに立てかけておける、便利なスタンドが売っているんです。
以下の写真に写っているものですが、実は100円ショップなどに売っている、杖スタンドなんです。平たい面は粘着質になっていて、扉や棚などに貼り付けられるようになっています。反対側のC字形の部分には白杖を挟み立てかけられるようになっており、しっかりと白杖を支えてくれます。
100円ショップには同様の商品で傘用のものも売っているのですが、そちらは白杖には太すぎてしっかりと保持できません。お求めの際には「杖用」などと記載のあるものをお探しください。
5. 振り方など
最後はアイテムではなく、白杖の使い方、つまり振り方や突き方について少しご説明します。こちらも視覚障害者の皆さんには当たり前のことかと思いますので、読み飛ばして頂いて結構です。
上記でも少し書きましたが、白杖の振り方・突き方にはスライドテクニック、タッチテクニック、タッチアンドスライドテクニックの3種類があります。スライドテクニックとは白杖を地面に付けたまま左右に滑らせるように振る方法、タッチテクニックとは白杖を地面から離して左右を突きながら歩く方法、そしてタッチアンドスライドテクニックはこれら療法を合わせた使い方です。
白杖に完全に頼って歩かなければならない僕達全盲にとって、最も安全で歩きやすいのは、常時足元を探ることのできるスライドテクニックでしょう。僕自身、周りに人が殆どいなければ、スライドのみで歩行しています。しかし、通勤ラッシュ時の駅構内など人の多い場所では、なんとか自らの存在を周囲に知らせ、気付かせなければ安全に歩行することができません。特に歩きスマホが増加している昨今、タッチテクニックで音を立てながら歩かなければ非常に危険です。
しっかり点字ブロックや壁などを探らなければならない状況ではスライド、周囲に自らの存在を知らせなければならない状況下にはタッチテクニックを、臨機応変に使い分けることが望ましい、ということですね。
全盲歴の浅い僕も、最近やっとこの2種類の振り方を自由に使い分けることができるようになってきましたが、やはりヒヤッとする場面は多いです。そのため、少しでもスライド・タッチテクニックの効果を高めるために、以上のような鈴やグリップテープを使っているんです。皆さんも様々な工夫をされているかと思いますが、少しでも快適・安全に歩けるよう、できる限りの準備をすることをお勧めします。
まとめ
と、いうことで、今回は僕が日々行っている、白杖の工夫についてご紹介してきました。以上でご説明した工夫は全て全盲でもできることだと思いますので、よろしければ一度お試しください♪