簡単5STEPで日本語版Playストア対応
Windows Subsystem for Androidをダウンロードする方法


「最後のメジャーアップデートになる」という宣言を撤回して去年の10月にMicrosoftがリリースした、Windows 11。メインのスクリーンリーダーとしてWindows 10専用のPCトーカー10を使っていたために無償アップデートを停止していたLUCAですが、ゴールデンウィークにWindows 11を標準で搭載した、Surface Go 3というタブレットを購入しました。

1週間がけで初期設定を終わらせ新規UIに慣れてきたLUCAがまず興味を持ったのは、AndroidアプリをPCで起動・操作することができるという新機能、「Windows Subsystem for Android(WSA)」でした...ただ、検索してみるとこれはInsider向けの機能で、現状(2022年5月時点)ではアメリカから、英語でしかアクセスすることのできないサービスだということ...。加えて、唯一提供されているストアは本来のデフォルトサービスであるGoogle Playストアではなく、アプリ数が大きく制限されたAmazonアプリストアの劣化版であるとのことで、気軽に試せるような機能ではなさそうでした。

とはいえ、どんな機能にも抜け道が用意されているもの。無事日本語版Playストアをまとめて入手することのできる、特殊なダウンロード方法を見つけることができましたので、今回はその手順について詳しくご紹介したいと思います。

⚙今回も、記事中でご紹介しているサイト・アプリなどは全てスクリーンリーダーにより操作可能であることを確認してから掲載しています。ただし、Playストアからダウンロードしたアプリは必ずしもTalkBackに対応しているとは限りません。
また、今回扱っているダウンロード方法は法律にもMicrosoftの規則にも反したものではありませんが、あくまで個人のプログラマーが開発した非公式の手段であり、記事執筆時のWSAにのみ有効なものです。いつ使えなくなるかわからないものなので、試してみたい方はできるだけ早めにご利用ください。


地球儀の周りを、ネットワークをイメージした無数の星座が取り囲んでいるイラスト

STEP0: 事前準備

日本語版Playストア内蔵型WSAのダウンロード・インストール・起動には、以下の登録・設定が必要となります。必ず次項の手順に進む前に準備をお願いします。

1. GitHubアカウント
Playストア・WSAのインストール用ファイルはGitHubのレポジトリからワークフローを使って生成・ダウンロードすることになりますので、アカウントをお持ちでない方は事前にGitHub.comで無料登録を行ってください。
2. 開発者モードの有効化
「設定」を開き、「プライバシーとセキュリティ」 → 「開発者向け」に進み、「開発者モード」ボタンを押下し「オン」に切り替えてください。
3. Windows機能の追加設定
「コントロールパネル」で表示方法を「カテゴリ」に変更した後、「プログラム」 → 「Windowsの機能の有効化または無効化」へ進み、一覧の中から「Windows ハイパーバイザープラットフォーム」と「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れて「OK」を選択します。
パソコンを再起動すると、WSAのインストールと起動に必要な機能が適用されます。

以上で事前設定は終了です。ここからは実装に必要なファイルを、GitHub経由でダウンロードしていきます。


スマートホンを操作しているペンギンのイラスト

STEP1: 必要なファイルのダウンロード

実装ファイルをダウンロードするには、まずGitHubにログインして以下レポジトリをフォークしてください。
なお、レポジトリをフォークするには画面中央の、「Fork this repository」や「Fork your own copy of LSPosed/MagiskOnWSA」と書かれたリンクを選択してください。これによりレポジトリのコピーが作成され、必要な操作を行うことができるようになります。

「MagiskOnWSA」

正しくフォークすることができれば、自動的にフォーク済みレポジトリ、つまり自分のアカウント上に新しくコピーされた方のレポジトリへと遷移しているかと思いますので、ページ中央にある「Actions」タブを選択してください。

続いて切り替わったページの下方、見出し「Workflows」の直下にある「Build WSA」というリンクを選択して、更に下方に表示される「Run workflow」というボタンを展開してください。

正しく操作できていればワークフローを実行するための設定項目が表示されるかと思います。「Variants of gapps」というフィールドは「pico」に、「Root Solution」は「none」に、それぞれ設定してください。その後、下方の「Run workflow」ボタンを押下するとビルドが実行されます。

ビルドは4~5分程度で終了しますので、再度「Actions」ページの「Workflows」欄を開いてください。先ほどとは違い、「○○ Workflow runs」とワークフローの実行履歴が表示されているかと思います。

その中の履歴件名(Run 1 of Build WSA.)を選択し詳細ページへ移動した後、「Artifacts」と書かれた欄から使用中の環境に合ったダウンロードリンク(WSA-GApps-pico...)を選択します。
※64ビット版Windowsの場合は名前に「x64」と書かれたものを選びます。

以上で必要なファイルのダウンロードは終了です。やや複雑に感じられるかもしれませんが、簡単に言うと「レポジトリのフォーク」 → 「ワークフローの実行」 → 「アーティファクトのダウンロード」の3ステップなので、押すボタンさえ間違わなければ問題なく完了できるかと思います。なお、このファイルは容量が大きめなので、環境によってはダウンロードに少し時間がかかってしまう可能性があります。


STEP2: インストールと起動

ファイルがダウンロードできたら、デスクトップなどのローカルディレクトリに張り付けて解凍していきます。ただこの際、圧縮ファイルと解凍済みフォルダは同じ階層に保存されるよう注意してください。

解凍が完了したらフォルダを開いて、「Install.ps1」というファイルを右クリック(Shift+F10またはアプリケーションキー)後、表示されたメニューの中から「powerシェルで実行」を選んでインストール作業を進めます。なお、許可を求められた場合には「y」で承諾してください。

インストール作業が終了してPlayストアが立ち上がれば成功です。同時にWSA設定やアプリストアなどの付属アプリもインストールされているはずなので、念のためにスタートメニューの「すべてのアプリ」からご確認ください。

※WSAのインストール・起動には最低でも8GBのメモリが必要とされていて、LUCAのSurface Go 3のようにRAMの小さいデバイスでは一回一回警告ダイアログが表示されてしまいます。とはいえ、毎回4GBの物理メモリで問題なく操作できていますので、気にせず閉じて起動を続行しても大丈夫かと思います。


STEP3: Androidアプリのダウンロード

アプリをダウンロードし始める前に、まずはスタートメニューから「Android™ 用 Windows サブシステム設定」というアプリを開き、「開発者モード」のトグルボタンを有効化します。この設定がされていないとPlayストアが正しく動作しない可能性がありますので、最初に変更するようにしましょう。

あとはAndroid用のPlayストアと同様で、Googleアカウントでサインイン・サインアップすればストア中のアプリをダウンロードすることができます。スマートホンでしか遊べないゲームも、視覚障害者用の支援アプリも、Androidで操作することのできるアプリは大部分がWSAに対応しています(一部の古いアプリはパソコンで操作するよう最適化されていません)ので、ぜひお好きなアプリを探してみてください。

最後に、WSA専用の読み上げ機能やタッチ操作など、視覚障害者向けの情報を記します。普段からスクリーンリーダーを使っている方はぜひ参考にしてください👇

サブシステムスクリーンリーダー
PCトーカーやNVDA、JAWSなどのWindows用スクリーンリーダーに対応していない代わりに、WSAでは「サブシステムスクリーンリーダー」という、TalkBackを基にした読み上げ機能が用意されています。
起動・終了はともにキーボードショートカット(Ctrl+Win+t)で行い、起動中はタブレットPCであってもタッチ操作が無効化されてしまいます。そのため、サブシステムスクリーンリーダーを使用している間はAlt+矢印キー(上下左右へのフォーカス移動)とAlt+Enter(選択・決定)で画面上を移動することになります。
スクリーンリーダーの設定
まだベータ機能であるためかLUCAが探し切れていないだけなのか、サブシステムスクリーンリーダーの音声・話速・ピッチ等を変更するための設定画面・ショートカットキーはまだアクセスすることができません。
ただ、Playストアからシステム設定を開くことのできる読み上げエンジン系アプリを入れることで、間接的にTalkBackの各種設定値が変更可能になることが確認できています。LUCAはAquesTalk Proを使って試しましたが、とりあえずエンジン以外の項目はAndroidと同様に設定できるようでした。
サブシステムスクリーンリーダーの読み上げ速度が気になる方はぜひお試しください。
タッチ操作が求められるアプリ
スクリーンリーダーに対応したアプリであっても、中にはパソコンで動作するよう作られていないものがあります。
そのようなアプリはサブシステムスクリーンリーダーがなくても操作できるか確認し、一度パソコン・サブシステムのスクリーンリーダーを無効化してからお使いください。

※LUCAがダウンロードしたものの中では、「Blindie Match のみキーボード操作に対応していませんでした。

以上でPlayストア内蔵WSAのダウンロード・使用方法についての解説は終了です。

少々複雑な手順はありますが、視覚障害者向けのスマートホンアプリをWindowsパソコンに保存していつでも呼び出せるというのは操作性・アクセシビリティを向上してくれる、便利な手段だと思います。Windows 11をご使用中の方はぜひインストールしてみてください。


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